マチュ・ピチュ-アルトマヨの森奮闘記

青年海外協力隊2022年7次隊として、林業・森林保全分野でペルーに派遣されました。クスコ州のマチュピチュ歴史保護区で森林保全活動をしていましたが、情勢悪化に伴いサン・マルティン州のアルトマヨの森保護区に任地変更となりました。自分が将来過去を振り返るための備忘録も兼ねて、日々の活動をボチボチ綴っていこうと思ってます。時々暑苦しい文章になるかもしれませんので、ご承知おきください。

任地クスコでの焦燥感と満足感

クスコの中心街アルマス広場。町全体は静かだけどここは観光客も多く、ここが世界遺産の街であることを気づかせてくれる。



とうとう任地クスコでの生活が始まりました。
8月16日にクスコに赴任してきて1か月。すごく濃い1か月を過ごしたように思います。

 

リマ最終日の着任式。配属先の方々と初対面。各々5分間自己紹介のプレゼンを行った。



 

まずは日常生活。
クスコは標高3400メートルの高地にあるので、前日から高山病対策をしてクスコに向かいました。薬を飲んで準備万端と思っていても、やはり酸素が薄く呼吸がし辛いように感じました。幸い高山病になることはなかったものの、やはり急な坂道を登るときなどはすぐに息切れしてしまいます。さらに高地にあるため、朝夕は冷え込み、時には0度近くに下がる一方、昼間は日差しが強く気温も20度を超えるくらいまで上がります。日隔差がまさに20度・・・。こんな気候条件の厳しい街で、生活がスタートしましたが、この街は魅力で溢れています。そもそも世界遺産です。

 

息をのむほどの絶景。トレッキングに行ったときクスコ市街を見下ろす絶景を見て感動。



 

クスコの人はみんな優しく、ここで奥深い文化に触れながら彼らと2年間ともにできることが楽しみで仕方ありません。サッカーに誘ってもらったり、パーティーに招待されたり、また8月31日に誕生日を迎えた私に誕生日会を開いてくれたりと毎日が楽しいことで溢れています。

 

職場の同僚の自宅で行われたパーティに参加。初めてクイ(テンジクネズミ)も食べた。ペルーの人は踊りが大好きな人が多い気がする。。



 

職場の同僚とその友達とサッカー。さすが南米みんな足元の技術が高い。高地でのサッカーはさすがに体力が持たなかったけど、お膳立てもあって、何とか二得点。



職場とホストファミリーでそれぞれ誕生日を開いてもらった。こんなにも盛大に祝われたのは子供の時以来かもしれない。






一方で、月曜日から金曜日の平日は自宅から徒歩で15分くらいの距離にある事務所で勤務しています。午前中は主にデスクワークで、マチュピチュ歴史保護区での森林保全活動の報告書を読み込んで、これまでの背景を理解した上でこれからの活動計画を練っていました。知らない専門用語も多いので、少しずつ単語を調べたり同僚につたないスペイン語で尋ねたりという状況ですが、保護区が抱える問題を情報として少しずつ理解してきたように思います。午後は“現地語学訓練”としてJICAが準備してくれたスペイン語のクラスを職場で受けていました。地方都市なのでWi-Fiが必ずしも安定しているわけではなく困難もありましたが、ペルーでのスペイン語に慣れるためにも毎日真摯に取り組んでいたように思います。しかし、クスコ市内から活動地のマチュピチュ歴史保護区までは片道2時間かかってしまうため、この語学レッスンのために1か月間1度も保護区に行くことはできず、文章を通しての情報は入ってくるものの実情を自分の目で確かめることはできませんでした。一緒に渡航してきた同期はそれぞれの職場で本格的に活動をスタートさせているのを横目に、焦りを感じることもありました。こういった葛藤を職場の同僚に打ち明け、かなり励まされ、支えていただいたように思います。おそらく国際協力に対する思い入れはかなり強い方と自負しており、そんな中ですぐそこに活動地があるのに活動を本格化できないことへネガティブな感情を自分一人でコントロールすることは難しかったですが、今回の経験を通して「支援は一人でできない。誰かに支えられて、自分も誰かを支えられる。」ということを改めて実感したように思います。

 

職場でずっと読み込んでるマチュピチュ歴史保護区の保全計画が書かれた本。専門用語も多くて、なかなか難解。




そして先週9月13日に無事語学訓練の最後を締めくくる最終プレゼンテーションを無事終えることができました。自分の職種、私の場合は林業・森林保全分野に関する内容に関して10分間スペイン語でプレゼンを行い、質疑応答を5分間受けるというものです。専門的な内容をスペイン語で発表するというのは、初めてのことであり分からないことを同僚に尋ねたり、プレゼン練習に付き合ってもらったりして当日の本番に臨みました。テーマは“シロアリの生物学”。生態系の重要さを“1種類の生物”を例に共に考えるというワークショップを行いました。シロアリを選んだ理由としては、①シロアリは木材を食べることができる生物で、木造建築物の多い日本では森林科学分野で研究対象としている方が多く情報が多く蓄積されているため、②森林生態系において植物の繊維物質であるセルロースを分解できる生物は限られており、シロアリは森の分解者として生態系において重要な役割を果たすこと、③ネガティブなイメージを抱かれがちなシロアリは実は非常に面白い特性を持つ生物で、今世界が抱えている社会問題を解決しうるポテンシャルを持つこと、でした。これらの3つに関して説明を加えながら、オンライン開催ではありましたがクイズや質問を盛り込んだ参加型のワークショップを意識して内容を構成しました。まだまだ説明したいことをスペイン語でうまく伝えることが難しいことも多く、100パーセントの出来とはお世辞にも言えませんでしたが、それでもそれなりに面白くて、興味を持ってもらえるワークショップになったのではと自負しています。職場には生物学士や農学士が多いものの、生物学に馴染みのない観光学士や秘書もいますが、みんな僕のプレゼンが終わった後「Takaのワークショップすごくおもしろかったし、すごく勉強になったよ」と声をかけてくれて非常にうれしかったです。これからの活動の中でもおそらくワークショップを開くことはあると思いますが、今回の発表で少しばかり自信をつけることができました。焦燥感を常に抱えながらの1か月でしたが、励まし続けてくれた同僚とスペイン語クラスの担当講師、そしてこのような機会を与えてくれたJICAに感謝しています。

 

ペルーで初めてのTaller(ワークショップ)。テーマは"シロアリの生物学"っていうマニアックなものだったけど、なかなかに示唆に富んだ内容だったと自負している。もっとスペイン語能力が高ければ、よりよいTallerになったと思う。。改善あるのみ。



 

そしていよいよ今週からマチュピチュ歴史保護区での活動が本格的にスタートします。これからマチュピチュ保護区で新しい発見をし、色んな人と出会い、そしてともに活動ができることにワクワクしています。“マチュピチュ”を知っている日本人はきっと多くいて、実際に訪れてみたいという人も多いかもしれません。しかし、脚光を浴びているのは遺跡がメインで豊かな自然資源が広がっていることも、そもそも文化的側面だけでなく自然的側面も評価されて世界複合遺産に登録されたということも知っている人は多くないかもしれません。日本から派遣された青年海外協力隊員として、その自然資源をいろんな人に知ってもらいたいと思うとともに、土砂崩れ等の自然災害だけでなく森林火災など人的要因で劣化する生態系を守り、修復していく一端を担えたらと思います。おもに育苗施設の管理運営、植林の計画と実施、そして周辺住民への啓発活動がメインの活動になる予定です。これからまだまだ予期せぬ壁にぶつかると思いますが、周りの助けも借りつつ一歩一歩着実に進んでいきたいと強く思っています。

 

毎週土曜日は市街散策。決して大きな街ではないけど角を曲がるたびに新しい発見のある街、クスコ。ここに来られて本当に満足。